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佐敷の鬼鷲 (その3)


巴志は戦国乱世の世に、風雲児の如く台頭し、群雄割拠する武勇無比の戦国武将を次々打ち倒し、三山を統一した武将である。

体力、胆力、知力は人より優れたものがあったのだろう。

佐敷子按司のころ、巴志を讃えた「おもろ」がある。

1 さしきなわしるに(佐敷苗代に)

  すで物 ま物 まだまの(生まれたるうづ子 真玉の如く)

  とりやがる みしやこ(飛び上る ミサゴ)

  また もたい苗代に(又栄え 苗代に)

2 さしき じゃぐちに(佐敷門口に)

  おにわしの はねうちする みもん(鬼鷲の羽ばたきする見事)

  また にしのじゃぐちに(北の門口に)

この「おもろ」は、佐敷苗代に狙った獲物は鷲のように上空からでも素早くとらえることができる傑物が現れた。

佐敷村入口で、鬼鷲の羽ばたきする雄姿は見事である。という主旨である。

鬼鷲は鷲の中でもずば抜けたものを意味し、巴志の器量が優れたものであることを「おもろ」詩人が讃えたものである。

巴志が按司として村人から信望を集めたのは、与那原港に入港してきた日本の商船から鉄器類を買い求め、佐敷領内の農民に分け与えたことであった。

その際、三年がかりで作らせた自慢の名刀も交易のため手放したと伝えられている。

中山王察度が牧港に入港してきた日本の交易船から、鉄器類の輸入につとめ、農民に分け与え領民から父母のように慕われたのと同様。

巴志は与那原や馬天港を拠点に鉄器類を求め、佐敷領内に鉄製農具の普及をもたらし、民衆から信頼と期待が寄せられたものであった。 



佐敷の鬼鷲 (その2)


巴志は17歳のとき、親のすすめで美里、伊波按司の娘と結婚し、翌年長男が誕生した。

佐敷間切(村)は、父・苗代大親を中心に村の共同体意識は従来にまして強く高まってきていた。これは農業生産が高まり豊作が続いたこともあるが、父・大親は佐敷按司として交易を行い、領民の繁栄をもたらしたからである。

そして航海安全、五穀豊穣祈願、領内の平安祈願等の祭祀は、祝女である巴志の母の役目であった。

祝女は神に祈る人であり、按司や大親などの家族の女性が祭祀の司であった。

民衆が繁栄することは按司の人徳によるものであり、祝女の祈願が天に通じたものと思われたので、領民は按司の徳に強い信頼を寄せるものであった。

巴志が21歳になると、父は巴志に按司の職務を任せることにした。

父按司は老齢でもなく、病弱でもない。ただ青年巴志の勢いが、すでに按司としてふさわしいものがあったこと、また按司として役目を果たしうるよう修業させるため、按司の職務を代行させたものであろう。

父は佐敷按司であり、巴志は「佐敷子按司」と呼ばれていた。

巴志は按司の職務を任されたといっても佐敷の領民にとって父・苗代大親は、あくまで佐敷按司であり、巴志はその子「佐敷子按司」であった。

そのことが後年、第二尚氏の代「佐敷子按司」と記されていたことから「子」が「小」となり、巴志は身体が小さかったから佐敷小按司と呼ばれていたと伝えられているが、それはまちがいであろう。

巴志の童名は「こはちもい」であり、転じて「こはじ」と呼ばれていた。父按司に対して子按司(こあじ)であったのである。




佐敷の鬼鷲 (その1)


沖縄から明国へ留学生が派遣され、明国からは三六姓といわれる人々が来島し、人事交流が盛んに行われるようになってきた。

そして按司時代の三山王国は、長い眠りから夜明けをむかえ激動の時代が始まろうとしていた。

そのころ佐敷の巴志は、快活、機敏で行動力に富んだ少年であった。
若者に成長すると他の若者たち同様、ときには中山領の那覇(浮島)まで、進貢船の出港見送りや、入港の様子を見に行ったことであろう。

巴志が15歳のころ中山の進貢物資は、馬天港の汪英紫や糸満港の承察度の比ではなかった。

中山の進貢物資は馬120頭、硫黄1万五千斤、その他、銅、錫、南方産の胡椒等、大量の物資が船積みされていた。

硫黄は明国では火薬の原料に使用され貴重なものであった。そして馬は将兵用に重宝がられていた。

南山、北山とも進貢には馬や硫黄を主品目にしていたが、中山王察度の朝貢に及ぶ物でなかった。

中山王察度は、出港見送りや入港出迎えのほか、波の上の護国寺に航海安全、領民の平安祈願等のため訪れることがあった。

老齢の察度王は頭は白髪で真っ白、体格は頑丈そうで、どっしりとして威厳のある風格は中山王の貫禄がにじみ出ていたことであろう。

感受性が強く、行動力のある巴志は、自分も将来は察度王のような領民から慕われる「世の主」になりたいと思ったことであろう。

そして成長するにつれ、巴志の情熱は益々快活、機敏となり、行動は活気に満ちていたと伝えられている。




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